Fate/Zero補足情報その19 [Fate/Zero]

色々と謎の多いFateのストーリーや難解な専門用語を、少しでも理解出来るような補足情報です。
今回は第19話からの補足情報を色々と書いていきます。

Q1:何故起源弾に肋骨を用いたの?
A1:一定量を用意出来て、なおかつ加工が出来るからです。
   魔術師の体というのはそれ自体が魔力を帯びており、極端な事を言えば唾液や髪の毛です
   ら術者の魔力を有しています。
   切嗣の起源は切断と結合ですが、その起源を表に出すには恐らく髪の毛などでは出来ない
   と推測されます。(髪の毛や皮膚などからDNAを鑑定出来ても、その細胞と卵子と掛け合わ
   せて子供が作れないのと同じような理屈ですね)
   つまり起源の力を発現させる為には、より起源に近いもの、即ち魂の中心に近いものを媒介
   として用いる必要性がある、と推測されます。具体的に云うと生育過程で生成されていく代物
   ではなく、生誕時から体内に保有していた代物でしか発現出来ない、と考えられます。
   つまり突き詰めて言うと、内蔵か筋肉か血液か骨となりますが、内蔵と筋肉は切除すると大
   幅に身体機能を損ない、血液では絶対量が不足するのと弾丸の精製過程で使い物にならな
   くなる、という理由から肋骨を加工したんだと思われます。

Q2:ナタリアが言っていた刻印の痛みって何?
A2:移植された魔術刻印の痛みの事です。
   魔術師は親から子へ魔術刻印を継承しますが、これは云わば臓器の移植を受けるのに等し
   い行為とも言えます。つまり元々他人のものを自分の体に植え付けるわけですから、刻印に
   対して体が拒絶反応を示す事が多く、殆どの魔術師は刻印の移植を数回に分けて段階的に
   行い、刻印を体に馴染ませる作業を経て継承するわけです。
   それでも刻印に対する拒絶反応を完全に取り去る事は不可能であり、刻印を継承した魔術
   師は次代に受け渡すまで、この痛みに耐えていく必要性が生じるわけです。
   (実際stay nightでは凛が刻印の痛みを抑制するため、特殊な薬を定期的に服用している
   描写が存在している)
   切嗣が継承したのは魔術協会によって回収された衛宮の魔術刻印であり、そこにはこれま
   で衛宮家が代々修めてきた魔術や研究成果が記録されていました。その中で重要な部分
   を魔術協会側が押さえた上で、余った部分を切嗣が譲り受けられるようにナタリアが交渉し、
   礼装の作成と同時期に刻印の移植手術を行ったわけです。
   魔術師としての修行を殆ど行っていない切嗣が、固有時制御という特殊な魔術を行使する
   ことが出来るのも、極一部とはいえ彼が受け継いだ時間操作の魔術研究を行っていた衛宮
   の刻印の恩恵です。

Q3:今回の切嗣は何歳くらいなの?
A3:10代半ばですが、はっきりとは判りません。
   まず前回でも触れたとおり、アリマゴ島の事件は第4次聖杯戦争から20年前の出来事であり、
   切嗣がナタリアと出会ったのは9歳のときです。その後数年間という説明があるため、年齢的
   には20歳前でもおかしくはないわけですが、切嗣が久宇舞弥と出会ったのは第4次聖杯戦争
   の11年前、即ち18歳の時であり、今回の過去編に舞弥が登場してこない事から少なくとも彼
   が17歳になるまでの出来事であることが判ります。

Q4:ナタリアって魔術師だったの?
A4:魔術師狩りを主な生業とする封印指定執行者ですから、当然魔術師です。
   まあ魔術師の事を理解していないと、そもそも魔術師狩りという生業自体が成り立ちません。
   切嗣がそうであるように、ナタリアもまた攻撃魔術の競い合いこそが魔術師の戦闘と考えてい
   る大半の魔術師の思考を逆手に取るための通常兵器多用なので、彼女にとっても魔術という
   のは狩りの手段の一つに過ぎない、と推測できます。

Q5:ボルザークはなんで体の中に蜂を入れていたの?
A5:恐らく暗殺者に対するトラップのためです。
   ボルザークは魔術協会から封印指定を受けた魔術師であり、以前ナタリアが取り逃がしてい
   る事から自身が魔術協会の追っ手に命を狙われている事を知っています。
   その為、追っ手に対する交渉のカード(例えば蜂を解放して周囲の人間を屍食鬼にするなど)
   や、殺害された場合自身の研究を渡さないための証拠隠滅も兼ねたトラップとしての意味合
   いが大きかったものと思われます。

Q6:切嗣はナタリアを殺す必要があったの?
A6:ナタリアのことだけを考えて被害を度外視すれば、殺す必要性はありませんでした。
   まずナタリアが乗り込んでいた旅客機ですが、フランス発ニューヨーク行きの国際線であり、
   飛行高度は地上から1万3000メートルの成層圏と呼ばれる場所を飛んでいます。
   この成層圏は気圧が低く外気温度は-50℃であり、機外へ出た場合気圧差で気を失うの
   みならず気温差で体が凍りつくことも考えられます。
   つまり飛行中の旅客機から脱出するためには、それらに対する備えを用意しておく必要が
   ありますが、その用意をしていない事をナタリア自身が語っているため空中での脱出は不
   可能で、旅客機を地上に降ろして脱出する以外に助かる方法はありません。
   手段としては海上への胴体着陸か、空港への着陸の2種類になりますが、セスナ機レベ
   ルの操縦経験しかないナタリアに旅客機を胴体着陸させるというのは、オートマ軽自動車
   の運転経験しかない人にいきなり大型バスの車庫入れをやらせるようなもの。そのためナ
   タリアが助かるためには空港への着陸の方が、確率が高いわけです。
   ただし空港に着陸するという事は、蜂による被害を拡大させる可能性が非常に高くなること
   を意味しています。理由はナタリアが脱出を果たし、かつ蜂や屍食鬼を全て始末するまで
   の間、空港関係者を旅客機に近付けさせないようにする事が不可能だからです。
   以前ボルザークが居たところでは街一つが消えた、というナタリアの台詞でも判るとおり、
   蜂の被害は一度広がれば収束させるのが非常に困難でもあります。
   しかも今回はアメリカの大都市の一つであるニューヨークである以上、隠蔽工作も不可能に
   近いわけで、着陸させた場合の最小被害は空港全滅(密閉空間である旅客機内部ですら
   ナタリア一人では屍食鬼の増殖を防げなかったことから推測)であり、最大被害となると予
   測すら出来ません。(ロングアイランドやマンハッタン島は全滅の可能性が高い)
   つまり切嗣はナタリアを助けるために数万人を危険に巻き込むのか、それとも数万人を守
   るためにナタリアを見殺しにするのかという二者択一の中から後者を選択したわけです。
   海上で仕留めたのは屍食鬼が海を渡れない事と、蜂の飛行距離が短いため被害の拡大
   を防げる事が要因でもあります。

Q7:切嗣は最初からナタリアを殺すつもりだったの?
A7:少なくともボルザークの蜂で旅客機の乗員・乗客が屍食鬼になった時点からです。
   そもそも今回の戦闘に於ける切嗣とナタリアの勝利条件は、ボルザークを殺害し彼の蜂を
   処分した後に遺体を回収することにありました。
   ところがボルザークが体内にまで蜂を隠し持っていたため、蜂が機内の人間を襲って屍食
   鬼にしたわけですが、密閉空間で屍食鬼の増殖に先んじて殲滅出来なかった時点でナタ
   リアの敗北は決定し、切嗣はナタリアの生還を諦めたわけです。あとは操縦者不在のまま
   大西洋上に墜落して全てを海の底に沈めてしまうしかなかったわけですが、同時に「なに
   があろうとも生き残る」というナタリアの信念を知る切嗣は、彼女が無事にコックピットを占
   拠して機体を地上に降ろす可能性を考慮し、その対応策として携帯用地対空ミサイルの入
   手に奔走していました。

Q8:ナタリアを殺した後の切嗣の独白の意味が判らないんだけど?
A8:あれは正義に対する怒りと絶望です。
   前回のお話で切嗣は死徒化したシャーレイを殺す事が出来ず、魔術協会と聖堂教会の介
   入を招いて島の住民が全滅しています。つまりシャーレイの命を惜しんだが故に、被害が
   拡大してしまったわけです。切嗣が言っていたヘマとは、この一件の事を指します。
   魔術の研究で他の人たちが犠牲にならないよう父親を殺したように、ナタリアの生還によ
   って空港の職員が犠牲にならないように彼女を殺した。それは多数を守るために少数を犠
   牲にするということであり正しい判断、即ち正義以外の何物でもないわけです。
   シャーレイから何になりたいかと問われたときから、切嗣は正義の味方になりたかった。
   しかし今の世界に於ける正義は父と、母と呼べる存在を彼自身の手で殺す事でしか成し
   えなかった。正義を行使するために、彼にとって大切な人を殺めなければならない矛盾。
   そして父やナタリアの死を無意味なものにしないためには、これからも同じ事を続けていか
   なければならないという残酷さ。
   それこそが正義を求める切嗣に対し世界が与えた対価であり呪いで、それを受け入れ、正
   義を行使する機械として生きる決意を固めた。というのが最後の独白部分になります。

Q9:結局過去編ってやる必要あったの?
A9:一応、あります。
   忘れていただいては困りますが、Fate/Zeroの主人公は他ならぬ衛宮切嗣です。
   そもそも切嗣は聖杯戦争の部外者であり、魔術戦闘に向かないアインツベルンが対魔術
   戦闘スペシャリストである彼を養子に招きマスターに仕立て、必勝を期したに過ぎません。
   つまり聖杯に関する御三家の目的と切嗣の目的は、最初から異なっているわけです。
   切嗣が聖杯に託す望みはあらゆる紛争が起こらない恒久的世界平和。身も蓋も無い言い
   方で評価するなら、子供の夢、といったところでしょうが、では何故そんな願望を持ち、何故
   聖杯に託すのか?という部分になると必然的に切嗣の過去を語るしかないわけです。
   つまりは、切嗣の願望に関する原因と過程の説明という意味で過去編が描かれたわけで、
   その点を理解(納得や共感ではない)出来ないと、必要なかったという評価になるのも致し方
   ないかと。

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